院政期社会の言語構造を探る

「伴大納言絵巻」 補註

 黒田日出男氏が「謎解き伴大納言絵巻」(小学館、2002年)で紹介している上野憲示氏が「伴大納言絵巻」(「双書美術の泉」38、岩崎美術社、1978年)で発表した連続傷痕計測結果とその評価は次のとおり。

 第十二紙の傷痕21と第十三紙の傷痕22の間が28.8センチメートル、第十三紙の傷痕22と傷痕23の間が28.7センチメートル、第十四紙の傷痕24と傷痕25の間が28.2センチメートル、第十四紙の傷痕25と第十五紙の傷痕26の間が28.0センチメートルであるのに対し、第十三紙の傷痕23と第十四紙の傷痕24の間は29.2センチメートルなのである。この第十三紙と第十四紙の間の傷痕のところで、前後の傷痕の平均に比べて約7ミリ多くなっている。この7ミリの数字からすると、第十三紙と第十四紙の間には、ほぼ一紙分の脱落を推定することができるのである。
 計測値は計測条件に左右される面があるので、なお今後の精査が必要であろうが、ともかく上野憲示の計測値、及び一巻説とも整合性があることが確かめられたといえよう。
 ゆえに、わたしは山根の観察結果である、上巻第十三紙と第十四紙の間に一紙分の脱落があるとの仮説に賛成である。(黒田日出男氏、前掲書、93〜94ページ)
 黒田氏によれば、上野氏の計測は、「伴大納言絵巻」は当初一巻であったことを主張するために行われたもので、このため、計測が行われ、その結果が発表された時点では、途中の一紙の脱落が想定されず、結果的に謎の人物の最終的な解明にはいたらなかった。



「伴大納言絵巻」 別註1