コンディヤックの生涯と思想

La vie et la pensee de Condillac

 エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック Etienne Bonnot de Condillac、1715年〜80年。グルノーブルに生まれる。生年に関しては1714年説もある。フランスの感覚論哲学者。歴史学者・政治学者マブリの実弟。ジョン・ロックの影響を受けて出発しながら、経験論的な認識の源泉である感覚の生成過程を徹底的に分析し、ロックの思想を唯物論の手前まで推し進めた。
 マブリ同様、サン・シュルピス神学校に学び、1741年には司祭に任命されたが、社交界に出入りしてさまざまな知識人と交わり、哲学者・著作家の道を進んだ。長兄の家の家庭教師をしていたルソーをとおしてディドロと知り合ったのはこの頃。40年代のコンディヤック、ルソー、ディドロは、週に一度はパレ・ロワイヤルに集まり、食事をしながら哲学を語り合っていた。ルソーとは、彼が亡くなるまで交友関係が続く。
 こうしたなかから生まれた処女作『人間認識起源論』Essai sur l'origine des connaissances humaines(1746年)では、感覚と記号による人間の認識の再構成を図り、人間の動物に対する優越性の源泉は言語であると主張。続いてヴォルフなどの記述にもとづくライプニッツ研究の成果を『モナド論』Les monades(1748年)としてまとめ、ベルリン王立アカデミーに提出。『体系論』Traite des systemes(1749年)では、『人間認識起源論』の主張にもとづき、デカルト、マールブランシュ、スピノザ、ライプニッツらの哲学体系の恣意性を批判し、経験によって保証された原理にもとづく体系を推奨している。その一部は、直後に刊行された『百科全書』の「体系」の項などに転載されている。ただし、コンディヤックは、『百科全書』の正式執筆者には加わっていない。
 1752年、フォントネルとともにベルリン王立アカデミーの会員に選出される。
 主著とされる『感覚論』Traite des sensations(1754年)では、感覚をもたない立像に五感を一つずつ付与していくという独自の想定のもとに、観念が感覚をとおしてどのように発生するかが追求され、いっさいは「変形された感覚」であり、認識は感覚に記号化のはたらきが加わったもの、学問は「よくできた言語」にほかならないとした。 また続いて刊行した『動物論』Traite des animaux(1755年)では、動物の感覚認識を支持し、デカルト、ビュフォンらの機械論的な考え方に反論している。
 1758年、ルイ15世の孫で、パルマ大公の子フェルディナンドの傅育官としてイタリアのパルマに赴き、パルマ王子の学習のために16巻の『教程』Cours d'etudeを編纂した。この教程は、文法、書く技術、推理する技術、考える技術、古代史研究序説、近代史研究序説、歴史研究からなる大部のもので、コンディヤックがパリに戻った後、1775年に刊行され、コンディヤックの全著作のなかでも、最も広く普及した。なお、このなかの『歴史研究』De l'etude de l'histoireは兄マブリが執筆している。
 1767年、パルマ王子の傅育官を辞してパリに戻る。翌68年、アカデミー・フランセーズに迎えられる。
 1776年、新国王ルイ16世の財務総監に就任したテュルゴーを理論的に擁護する目的などから、『相関的に考察したる通商と政府』Le Commerce et le Gouvernement consideres relativement l'un a l'autreを刊行し、富はすべて労働に基づくことを指摘。
 1777年、ポーランド政府から、論理学教科書の編纂を依頼され、1780年、『論理学』Logique刊。続いて『計算の言語』Langue des Calculsを書き始めたが、完成させることなく没した。
 1798年、全集刊行。

【電子テクスト】
Essai sur l'origine des connaissances humaines[人間認識起源論、フランス語]
Traite des sensations[感覚論、フランス語]
Cours d'etude pour l'instruction du Prince de Parme[パルマ王子教育のための教程、フランス語]
Le Commerce et le Gouvernement consideres relativement l'un a l'autre[相関的に考察したる通商と政府、フランス語]
(以上Gallicaサイト内)
【テクスト】
・Essai sur l'origine des connaissances humaines[人間認識起源論] (Vrin, 2002)
・Les Monades[モナド論] (Editions Jerome Millon, 1994)
・Traite des sensations, Traite des animaux[感覚論、動物論] (Fayard, 1984)
『人間認識起源論』 (古茂田宏訳、岩波書店・岩波文庫、1994年)
『感覚論』 (加藤周一、三宅徳嘉訳、創元社、1948年)
【参考文献】
『たわいなさの考古学』 (ジャック・デリダ、飯野和夫訳/人文書院、2006年)
『コンディヤックの思想ーー哲学と科学のはざまで』 (山口裕之/勁草書房、2002年)
【参照】
経済思想からみたコンディヤック&参考文献 (「経済思想の歴史」サイト内)
Condillac's life, thought and bibliography (英文;香港大学名誉教授Tim Moore氏サイト内)

 

「感覚論」内容目次

「動物論」内容目次

コンディヤックとモリヌークス問題

ビュフォンの「博物誌」とモリヌークス問題

コンディヤックによる記号の三区分とマブリの法思想

森村敏己氏によるコンディヤックとエルヴェシウスの比較

「18世紀人物誌」〜コンディヤック

近代知確立への歩み(17〜18世紀簡易年表) Chronologie