ホイジンガの描くグロティウス像

「レンブラントの世紀ーー17世紀ネーデルラント文化の概観」から

 日本語で読むことができるグロティウスの評伝は豊富とはいえない。そうした欠落を補うため、以下、ヨハン・ホイジンガ「レンブラントの世紀ーー17世紀ネーデルラント文化の概観 Nederland's beschaving in de zeventiende eeuw, een schets」(栗原福也訳、創文社、1968年)から、グロティウスの人物像に触れた箇所を引用・抜書し、紹介しておく。なお、同書の訳者あとがきによれば、ホイジンガにはグロティウスの専論「ヒューホー・デ・フロートとその時代」(1925年)もある。



 「ひとはあの偉大なるハイフ(グロチウス)その人の殆んどあらゆる特徴において、真のオランダ的性格を指摘することができる。かれはその精神と行状のあらゆる面において、骨のずいまで徹頭徹尾オランダ人である。わたくしはつぎの事実ほどかれがわが民族の子たることを明瞭に例示している特徴を知らない。その事実とは、かれの著作「キリスト教の真理」こそかれにとって「戦争と平和の法」と少なくとも同じ位に愛着おく能わざる著作であり、しかも当時かれの名声はなかんずくその著作に基づいていたということである。かれはルーフェステイン城内においてその著作をオランダ語韻文で綴ったが、それは誰のためだったかと言えばオランダ人水夫のためであった。これらの水夫は絶えずあらゆる国々へ航海したから、もしもかれらが信仰の真理を簡潔な形で理解しさえすれば、かれらはそのような真理を世界中に流布せしめるのに最も適していたのである。要約すればグロチウスはつぎのようになる。素朴な教訓詩人、温厚な楽天主義者、宇宙的に思索する平和愛好家、理性の証言に基づく敬虔な建設者、信仰問題においては調和と和解の精神の持主、独善的な正統主義への反対者、一言にして言えばレモンストランス主義者、すなわちこれである。」(上掲書112ページ)

 

グロティウスの生涯と思想

ホイジンガ:「レンブラントの世紀ーー17世紀ネーデルラント文化の概観」