スピノザ「神学・政治論」の構成
Tractatus Thoelogico-Politicus de Spinoza
| 以下、スピノザの主著の一つでありながら言及されることが少ない「神学・政治論」Tractatus Theologico-Politicusの内容目次と、その執筆動機を知るための有力な資料であるスピノザの書簡を掲げます。この目次は「岩波文庫」(岩波書店)の畠中尚志氏訳「神学・政治論 ー聖書の批判と言論の自由」(1944年刊)によるものですが、引用にあたって、表記を新仮名づかいと当用漢字に改めました。 |
| 緒 言 第1章 預言について 第2章 預言者について 第3章 ヘブライ人たちの召命について。又預言の賜物はヘブライ人たちにのみ特有であったかどうかについて。 第4章 神の法について 第5章 諸々の祭式が制定された理由について。又史的物語への信憑について、換言すればそうした信憑が何故に、又如何なる人々のために必要であるかについて 第6章 奇蹟について 第7章 聖書の解釈について 第8章 本章にはモーゼ五書並びにヨシュア、士師、ルツ、サムエル、列王の諸巻が之らの人々自身に依って書かれたのではないことが示される。その後で、之らの諸巻の著者が数人であったか、それとも一人であったか、一人であるとすれば一体誰であったかについて探究される 第9章 之らの諸巻に関する他の諸研究、即ちエズラは之らの諸巻に最後の仕上げをしたかどうか、ヘブライ写本の中にある欄外註は異なれる読み方を示したものかどうか 第10章 旧約聖書に於ける爾余の諸巻が上記の諸巻と同様の方法で吟味される 第11章 使徒たちは彼らの書簡を使徒として又預言者として書いたのか、それとも教師として書いたのかが探究される。次いで使徒たちの職分の何たるかが示される 第12章 神の律法の真の契約書について。又如何なる意味に於て聖書が聖書と呼ばれ、又如何なる意味に於てそれが神の言葉と呼ばれるか。そして最後に聖書は、神の言葉を含む限りに於ては損われざる形に於て我々に伝わったことが示される 第13章 聖書の教えは極めて単純なものであること、又聖書は服従以外の何物をも目的としていないこと、更に又聖書は神の本性については人間が一定の生活方法に依って模し得られること以外の何ものをも教えていないことが示される 第14章 信仰とは何であり、信仰者とは如何なる人々であるか。更に信仰の諸基礎が規定され、そして終りに信仰が哲学から分離される 第15章 神学は理性に隷属せず、理性も神学に隷属しないことが示され、併せて我々が聖書の権威を信ずる理由が説かれる 第16章 国家の諸基礎について、各人の自然権及び国民権について、また最高権力の権利について 第17章 何びとも一切を最高権力に委譲することが出来ないし、又その必要もないことが示される。更にヘブライ人の国家がモーゼの在世時代にはどんな風であったかについて、又モーゼの死後、諸王が選ばれる前には、どんな風であったかについて、又その国家の優越性について、最後に又神の国家が亡んだり、騒擾なしには殆ど存続し得なかったりした理由について語られる 第18章 ヘブライ人たちの国家組織と歴史とから若干の政治的教義を帰結する 第19章 宗教上の事柄に関する権利は全然最高権力のもとにあること、又我々が神に正しく服従しようと欲すれば宗教への外的崇敬は国家の平和を顧慮してなされねばならぬことが示される 第20章 自由なる国家に於ては各人はその欲することを考え、その考えることを言うことが許される、ということが示される |
| 【参考】 「神学・政治論」執筆の動機 スピノザ書簡30 スピノザからオルデンブルク(※)へ 「私は目下聖書に関する私の解釈について一つの論文を草しています。私にこれを草させるに至った動機は、第一には、神学者たちの諸偏見です。この偏見は私の見るところによれば、人々の心を哲学へ向わせるのに最大の障害となっています。ですから私はそれらの偏見を摘発して、それをより賢明な人々の精神から取り除くように努力しているのです。第二には、民衆が私について抱いている意見です。民衆は私に絶えず無神論者という非難を浴びせているのです。私はこの意見をも出来るだけ排撃せねばなりません。第三には、哲学することの自由並びに思考することを言う自由です。この自由を私はあらゆる手段で擁護したいと思います。当地では説教僧たちの過度の勢力と厚かましさのために、この自由がいろいろな風に抑圧されているのです(以下省略)。」 |
| フォールブルフ、1665年9月(または10月) |
| 「スピノザ往復書簡集」(畠中尚志訳、「岩波文庫」岩波書店、1958年) |
| ※ ハインリッヒ・オルデンブルク(1615年?−78年) ブレーメン生まれのドイツ人。1661年にスピノザを訪問し文通がはじまる。遺された書簡集のなかではスピノザの最大の文通相手。もともと神学者だが自然科学にも関心をもつ。また各国に知己が多い。書簡30は、オルデンブルクがボイルに宛てた手紙のなかに引用されて残されているもの。 |
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