飯島 正
Tadashi IIJIMA,Un Critique du cinema

明治35年(1902年)生まれ。映画評論家。
東京帝大在学中から映画評論を始めた日本の映画評論家の草分けの1人。 大正11年(1922年)に「キネマ旬報」同人となる。 1920年代ヨーロッパの芸術運動の最前線が当時勃興したばかりの映画にあるとの自覚から、フランス文学の造詣を下敷きに、本格的な映画評論を確立した。日本の外国映画受け入れの趨勢がアメリカにあるなかで、戦前の早い段階からヨーロッパ、第三世界の映画の紹介につとめている。 早稲田大学教授として、映画学の講義も行った。
昭和46年(1971年)芸術選奨文部大臣賞受賞。
平成5年(1993年)川喜多賞受賞。
平成8年(1996年)没。

【主な著作】 「シネマのABC」1928年 厚生閣出版<処女作>
「映画の本質」1936年 第一書房
「映画文化の研究」1939年 新潮社
「映画鑑賞読本」1948年 旺文社(※)
「映画と文学」1948年 シネ・ロマンス社
「フランス映画史」1950年 白水社
「世界の映画」1951年 白水社(※)
「イタリア映画史」1953年 白水社
「映画の見方に関する12章」1954年 中央公論社(※)
「日本映画史」1955年 白水社
「映画のあゆみ」1956年 淡路書房(※)
「わが青春の映画と文学」1969年 近代映画社
「前衛映画理論と前衛芸術」1970年 白水社(※)
「試写室の椅子」1972年 時事通信社(※)
「映画のなかの文学 文学のなかの映画」1976年 白水社(※)
「メキシコのマリンチェ」1980年 晶文社
「ヌーヴェル・ヴァーグの映画体系」1980年〜84年 冬樹社(※)
「戦中映画史・私記」1984年 エムジー出版
「ぼくの明治・大正・昭和」1991年 青蛙房(※)
「名監督メモリアル」1993年 青蛙房(※)
(※)は、如月所蔵の著作


【「シネマのABC」から】
 映画が映画として立って行く本質的なものは何であるか。演劇の写真でもなく小説の挿絵でもない本当の映画が依って自らを表明し得る本質的表現は何であるか。私は之を盲蛇におそれずに考えて見ようと思う…。(1924・6・9)
 これは、飯島氏の処女著作「シネマのABC」の巻頭に配された「映画のリズム」という文章の書き出しである。やや気負った文章だが、この文章からは、映画批評にかける飯島氏の意気込みが感じられる。また同時に、この短い文章からは、映画をコミュニケーション・ツールとみてまずその主題を分析する一般的な映画批評の方向とは異なる、あくまでも<表現>そのものにこだわる飯島氏の映画批評の方向性がうかがえるのではないか。
 なお同書には、飯島氏の帝大仏文科時代からの友人・渡辺一夫氏の跋文がついている。


【主な訳書】
モルナール・フェレンツ「リリオム」「お人好しの仙女」
ピエール・ルイス「欲望のあいまいな対象(女とあやつり人形)」
ポール・モオラン「世界選手」
アンドレ・ジード「ユリアンの旅」


【飯島正氏選出の各年のベスト外国映画(左)/同年の「キネマ旬報」ベスト1(右)】

西暦年 題名 監督 題名 監督
46年 我が道を往く L・マッケリー 我が道を往く L・マッケリー
47年 断崖 A・ヒッチコック 断崖 A・ヒッチコック
48年 悪魔が夜来る M・カルネ ヘンリー5世 L・オリヴィエ
49年 大いなる幻影 J・ルノワール 戦火のかなた R・ロッセリーニ
50年 自転車泥棒 V・デ・シーカ 自転車泥棒 V・デ・シーカ
51年 オルフェ J・コクトー イヴの総て J・L・マンキウィッツ
52年 ミラノの奇跡 V・デ・シーカ チャップリンの殺人狂時代 C・チャップリン
53年 禁じられた遊び R・クレマン 禁じられた遊び R・クレマン
54年 嘆きのテレ−ズ M・カルネ 嘆きのテレ−ズ M・カルネ
55年 夏の嵐 e L・ヴィスコンティ エデンの東 E・カザン
56年 夜の騎士道 e R・クレール 居酒屋 R・クレマン
57年 道 e F・フェリーニ F・フェリーニ
58年 崖 e F・フェリーニ 大いなる西部 W・ワイラー
59年 灰とダイヤモンド e A・ワイダ 12人の怒れる男 S・ルメット
60年 甘い生活 e F・フェリーニ チャップリンの独裁者 C・チャップリン
61年 処女の泉 e I・ベルイマン 処女の泉 I・ベルイマン
62年 野いちご e I・ベルイマン 野いちご I・ベルイマン
63年 第七の封印 e I・ベルイマン アラビアのロレンス D・リーン
64年 山猫 e L・ヴィスコンティ かくも長き不在 H・コルピ
65年 8 1/2 e F・フェリーニ 8 1/2 F・フェリーニ
66年 奇跡の丘 e P・P・パゾリーニ 大地のうた S・レイ
67年 仮面/ペルソナ e I・ベルイマン アルジェの戦い G・ポンテコルヴォ
68年 男性・女性 s J・L・ゴダール 俺たちに明日はない A・ペン
69年 アポロンの地獄 P・P・パゾリーニ アポロンの地獄 P・P・パゾリーニ
70年 バルタザールどこへ行く R・ブレッソン イージー・ライダー D・ホッパー
71年 哀しみのトリスターナ L・ブニュエル ベニスに死す L・ヴィスコンティ
72年 暗殺の森 B・ベルトルッチ ラスト・ショー P・ボグダノウィッチ
73年 ブラザー・サン シスター・ムーン F・ゼフィレッリ スケアクロウ J・シャッツバーグ
74年 叫びとささやき I・ベルイマン フェリーニのアマルコルド F・フェリーニ
75年 冬の光 I・ベルイマン ハリーとトント P・マザースキー
76年 アデルの恋の物語 F・トリュフォー タクシー・ドライバー M・スコセッシ
77年 自由の幻想 L・ブニュエル ロッキー J・G・アビルドセン
78年 家族の肖像 L・ヴィスコンティ 家族の肖像 L・ヴィスコンティ
79年 奇跡 K・T・ドライヤー 旅芸人の記録 T・アンゲロプロス
80年 ルードウィヒ/神々の黄昏 L・ヴィスコンティ クレイマー、クレイマー R・ベントン


【飯島正氏選出の各年ベスト日本映画(左)/同年の「キネマ旬報」ベスト1(右)】

西暦年 題名 監督 題名 監督
46年 或る夜の殿様 衣笠貞之助 大曾根家の朝 木下恵介
47年 安城家の舞踏会 吉村公三郎 安城家の舞踏会 吉村公三郎
48年 わが生涯のかがやける日 吉村公三郎 酔いどれ天使 黒沢 明
49年 晩春 小津安二郎 晩春 小津安二郎
50年 また逢う日まで 今井 正 また逢う日まで 今井 正
51年 カルメン故郷に帰る 木下恵介 麦秋 小津安二郎
52年 稲妻 成瀬巳喜男 生きる 黒沢 明
53年 あにいもうと 成瀬巳喜男 にごりえ 今井 正
54年 24の瞳 木下恵介 24の瞳 木下恵介
55年     浮雲 成瀬巳喜男
56年 ビルマの竪琴 e 市川 崑 真昼の暗黒 今井 正
57年 あらくれ e 成瀬巳喜男 今井 正
58年 杏っ子 e 成瀬巳喜男 楢山節考 木下恵介
59年 人間の壁 e 山本薩夫 キクとイサム 今井 正
60年 おとうと e 市川 崑 おとうと 市川 崑
61年 別れて生きるときも e 堀川弘通 不良少年 羽仁 進
62年 破戒 e 市川 崑 私は2歳 市川 崑
63年     にっぽん昆虫記 今村昌平
64年     砂の女 勅使河原 宏
65年     赤ひげ 黒沢 明
66年     白い巨塔 山本薩夫
67年     上意討ちー拝領妻始末 小林正樹
68年     神々の深き欲望 今村昌平
69年     心中天網島 篠田正浩
70年 無常 実相寺昭雄 家族 山田洋次
71年 儀式 大島 渚 儀式 大島 渚
72年 軍旗はためく下に 深沢欣ニ 忍ぶ川 熊井 啓
73年 津軽じょんがら節 斎藤耕一 津軽じょんがら節 斎藤耕一
74年 砂の器 野村芳太郎 サンダカン八番娼館望郷 熊井 啓
75年 ある映画監督の生涯溝口健二の記録 新藤兼人 ある映画監督の生涯溝口健二の記録 新藤兼人
76年     青春の殺人者 長谷川和彦
77年 竹山ひとり旅 新藤兼人 幸福の黄色いハンカチ 山田洋次
78年     サード 東 陽一
79年 月山 村野鐵太郎 復讐するは我にあり 今村昌平
80年 ヒポクラテスたち 大森一樹 ツィゴイネルワイゼン 鈴木清順

※飯島氏のベスト映画中、無印は「キネマ旬報」(キネマ旬報社)、eは「映画の友」
(世界映画社/映画の友)、sは「スクリーン」(近代映画社)の各誌による。空欄の年はデータなし。

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飯島氏と梶井基次郎(構想中)