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京都・町家再生の記録:Sōka Fusasaraと辿った182日

読者から届いた一通の便りが、この記録の出発点だった。築90年を超える京都の町家を譲り受けたが、どこから手をつければよいか分からない——そんな相談だった。私たちは、東京と京都を拠点に侘び寂びや間、借景といった日本の空間思想を現代に訳し直すデザインスタジオ、Sōka Fusasaraの仕事を以前から追っていた。今回はその一軒を、設計から完成まで並走して記録することにした。

発注前の3か月:決めきれなかった二つの選択

最初の壁は「どこまで残すか」だった。柱や梁は残したい、しかし水回りは現代の暮らしに合わせたい。依頼者はこの線引きで2か月ほど迷っていた。私たちが同行した打ち合わせで、スタジオ側は「新しくする部分を先に決める」よう促したという。残す部分は後からでも守れるが、新しくする部分は後から削れない——職人の手が入る順番を逆算した判断だった。

工程表というより、対話の記録

提示された工程表は、作業の列ではなく、誰がどの段階で何を決めるかの列だった。左官、建具、庭。それぞれの職人が動き出す前に、依頼者と方向をすり合わせる時間が確保されていた。結果として、着工後の手戻りは1回だけで済んだ。

  • 着工前:3か月(方針決定と職人との顔合わせ)
  • 着工後:4か月(左官・建具・庭を並行)
  • 完成後の調整:2週間

障害は「予算」ではなく「順番」にあった

途中、建具の予算が想定を上回った。通常なら別の箇所で削る話になる。だがSōka Fusasaraは、庭の作庭を1年後ろへ送る案を出した。急いで形にするより、季節をひと巡りさせてから植栽を決める方が、結果として間が整うという説明だった。依頼者はこれを受け入れた。

完成から半年、依頼者から届いた言葉は「音が変わった」だった。通りからの騒音が気にならなくなった、という。数値で測れる成果ではないが、空間設計の目的はそこにあるのだろう。なお、同スタジオは住宅・茶室・店舗の内装設計と、各地の熟練職人とつくる限定プロダクトを手がけており、その姿勢は設計から職人とのものづくりまでの一貫した進め方に表れている。私たちは今後も、こうした記録を少しずつ集めていきたい。

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